研究概要 |
本年度はコウノトリに適用可能なマイクロサテライト遺伝子座のプライマーを得ることを中心に研究を進めた.近縁種で開発されているマイクロサテライトのプライマーがコウノトリの遺伝解析に適用できるかどうかを検討するために,シュバシコウおよびアメリカトキコウのために開発されたプライマー計13対について,必要に応じて元々の塩基配列を参照してプライマー配列を再設計した後,利用可能性をチェックした.その結果,5対(遺伝子座)について,コウノトリのDNAサンプルにおいてPCR産物が得られ,かつ多型が確認され利用可能と判明した.利用可能と判明した遺伝子座を用いて,放鳥されたコウノトリのうち野外での繁殖実績がある11個体について各遺伝子座における遺伝子型を特定し,遺伝子座当たり2から9個の遺伝子型が確認された.また,野外で巣立ちした15個体について親子関係の解析を行った.その結果,雄親候補が複数存在した2個体については雄親を特定することができ,その他の13個体については社会的な親子関係が遺伝的にも支持される結果が得られた.解析可能な遺伝子座の数を増やすために,新たなプライマーの開発を試みている.コウノトリのDNAを抽出してクローニングを行い,マイクロサテライト配列が含まれる可能性がある176個の大腸菌コロニーを得た.引き続き実験を進め,マイクロサテライト配列が含まれているかどうかを確認した後,プライマーを設計し,利用可能性を検討する予定である.
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