研究課題/領域番号 |
22510251
|
研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
山本 祥一郎 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 主任研究員 (20392897)
|
研究分担者 |
前川 光司 北海道大学, 名誉教授 (80002301)
森田 健太郎 独立行政法人水産総合研究センター, 北海道区水産研究所, 主任研究員 (30373468)
|
キーワード | イワナ属魚類 / ミトコンドリアDNA / 遺伝的集団構造 |
研究概要 |
今年度は、これまで未収集であった河川でのオショロコマのサンプリングをおこない、ミトコンドリアDNA塩基配列を指標とした遺伝子解析を実施し、前年度までに収集済みの集団を併せて計73集団1211個体についてDNAタイプを特定した。その結果、日本、アメリカ、ロシアの集団から計68種類のハプロタイプを見出し、それぞれをDNAデータベースとして整理・記録した。また、国際DNAデータベースから北極海周辺に広く分布するホッキョクイワナのハプロタイプ62種類を取り出し、オショロコマから得られたハプロタイプを併せて系統解析をおこなった。その結果、オショロコマとホッキョクイワナはそれぞれ相互に単系統を形成せず、北海道や日本海周辺河川など北太平洋西方地域に分布するオショロコマは、その他の地域のオショロコマ(ベーリング海周辺、アラスカ、北アメリカ北西部、ロシア北方地域)やホッキョクイワナと姉妹群を形成することがわかった。また、塩基置換率に基づく計算により、北海道・日本海周辺・オホーツク海沿岸河川に分布するオショロコマは、その他地域のオショロコマ+ホッキョクイワナの系統と約1,600,000-2,130,000年前に分化したと推定された。以上より、北海道や日本海周辺河川に分布するオショロコマは古い系統分化の歴史をもち、他のオショロコマ系統と比べて遺伝的固有性の高いグループであることが明らかとされた。イワナについては、既往文献調査およびサンプリング調査を実施し、これまでに確認されたミトコンドリアDNAタイプを整理する作業をおこなった。その結果、熊野川、木曽川、矢作川に分布するイワナや琵琶湖流入河川に分布するイワナなど、遺伝的に分化を遂げたいくつかの地域集団を特定することができた。次年度以降、さらに多くの集団について遺伝子データを蓄積し、両種について進化的に重要な単位の特定を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目的を達成する上で、分布域を網羅するサンプル収集は不可欠であるが、これまで両種ともに遺伝子データの蓄積は順調に進捗している。最終年度では、可能な限り未収集河川でのサンプリング、遺伝子分析を進め、イワナ、オショロコマの詳細な集団構造の解明に努める。
|
今後の研究の推進方策 |
本課題を推進していく過程で、北海道を含む日本海周辺に分布するオショロコマの系統がサハリンや千島列島のいくつかの水域で他のオショロコマ系統と同所的に生息していることが明らかとされた。次年度では、複数の系統が同所的に生息している水系においてマイクロサテライトDNAを指標とした分析をおこない、両系統間の交雑の程度を調べるとともに、これまでの分類関係に再検討を加える予定である。
|