本研究は、大きな歴史的な出来事が、国民国家の確立(と補強)に利用される諸相を明らかにすること、またその際に、公共空間のデザインやしかけを始めとする、広い意味でのメディアを媒介とする諸相を明らかにしようとするものである。 本研究はメキシコシティーを対象とするものであるが、他国のケースに関する先行研究も比較の対象として重要性を持つとの判断から、比較の対象となりうる他国のケーススタディを収集、調査した。大規模な公共空間が強い装飾性を持ち、そこに国家的なメッセージ性が見て取れるケースに関する先行研究としては、大きな社会変動を経験した国や強力な国民への国家への動員が行われた国や時代について、多くの蓄積があることがわかった。しかし調査対象となっているメキシコシティーのケースは、歴史的、考古学的モチーフが多用されることや人物像が多く用いられる特徴があるなど、作られた時代やスタイル、好まれるモチーフなどの点で、これらのケースとかなりの隔たりがあることがわかった。 一方、建築や公共空間と、社会やコミュニティー、公共性といった概念との関連に関する理論的な研究を進めた。 メキシコに赴き、主に、公共空間(駅)及びその他のモノに見られる歴史的できごと(主としてメキシコ革命)のモチーフ、表象に関連する資料を収集するとともに、ポップアートに関する現地調査を継続した。また、これらの分野に関する(公共性全般も含む)二次資料の狩猟も行った。これらの資料を整理したうえで、その分析を進めているところである。
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