メキシコの公共空間の一つに、メキシコシティの地下鉄の駅構内がある。そのデザインは装飾的で、商業的広告のかわりに、メキシコの歴史に関連するテーマやモチーフが用いられたオブジェや壁画が多用され、メキシコの過去を再構成する場となっている。歴史は、祭典や記念碑、伝承その他の、様々な媒体によって記憶され、人々に伝達され、国民に共有されることにより、「国民化」に資するシンボルとなることが多かった。メキシコシティの地下鉄構内の一連の意匠もまた、そのような過去の歴史的な記憶を伝達する、広義の「メディア」としての役割を持っていると言える。先スペイン期の歴史などのメキシコの過去のできごとと同様に、メキシコ革命という歴史上のできごとは、国民国家の確立のためのイコンとしての役割を与えられている点で、壁画運動と共通性が認められる。
|