研究課題/領域番号 |
22510258
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
友常 勉 東京外国語大学, 国際日本研究センター, 講師 (20513261)
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キーワード | 伝統文化 / 芸能史 / 門付け / 部落問題 / バスク |
研究概要 |
本研究の目的は、被差別部落の門付け芸である「阿波木偶箱廻し」とスペイン・バスク地方の被差別民アゴテ出身の彫刻家・サビエル・サンチョテナの調査を主要な対象として、伝統文化を現代化する試みが地域社会の活性化に与える影響を考察することである。平成23年度は、日本国内では徳島県の門付け・阿波木偶箱廻しの基礎史資料を収集・撮影した。さらにその史資料の整理と翻刻をおこなった。また、芸能文化の淵源を探る目的から、岩手県平泉市の毛越寺の二十日夜祭の延年の調査をおこなった。さらに、地域文化の創造という観点から、京都・東九条地域における被差別部落と在日朝鮮人社会に関する資料調査をおこなった。スペイン・バスク地方の被差別民アゴテとアゴテ出身の彫刻家サビエル・サンチョテナの調査では、サンチョテナ美術館の調査とサンチョテナ氏に対するインタビュー、全作品のリスト化および全作品についてのインタビューをおこなった。また、サンチョテナ氏の案内により、ビルバオ近郊のゴシック建築にみる被差別民アゴテの技術的達成についての調査をおこなった。これらの調査成果は、「靖国・天皇制問題情報センター通信」106号~117号(平成23年4月~24年3月)の連載「芸能民のフォークロア」(計12回)、および友常「門付け芸の精神史-阿波木偶箱廻しと出雲の大黒人の詞章・楽曲から」『東京外国語大学論集』82号(2011年7月)に反映された。さらに上記の連載を踏まえて、友常勉「労働・縁起・構想力-宮本常一、中上健次、サビエル・サンチョテナ」『現代思想』39巻15号(2011年11月)を論考として発表した。また、友常勉『戦後部落解放運動史永続革命の行方』(河出書房新社2012年4,月11日刊)、とりわけ序章と第4章に反映された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
徳島の門付けおよび周辺の門付け調査については史料調査とインタビューの整理は一段落した。平成24年度はこれらの成果の分析と論文化をおこなう。スペイン・バスクでの調査については、サビエル・サンチョテナの作品と思想に焦点をあてるという調査方針に重点を置くことで成果をあげることができた。さらにビルバオ近郊の教会建築を調査することで、アゴテの技術的達成について基礎データを収集することができた。こちらも、平成24年度に分析し、論文化する作業に入る。これらの行程はすべて予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は研究計画最終年度にあたり、国内の門付け調査について継続するとともに、民俗芸能学会での報告を予定している。また、本調査で明らかになった伝統文化の精神史を普遍化するために、山本ひろ子氏(和光大学教授、日本宗教思想史)、鈴木創士氏(翻訳家、戯曲家、フランス思想研究者)を招いたミニ・シンポジウムを東京外国語大学で開催し、本調査の成果を社会に還元する予定である。これを踏まえて、本年度はこれまでの論考と史資料をあわせて、調査報告書を提出する予定である。 なお、地域文化の創造についてはまちづくりなどのプロジェクトとの関係も視野に入れる必要がある。これについては友常『戦後部落解放運動史永続革命の行方』(河出書房新社2012年4月11日刊)で京都・東九条地域を扱うことで考察したが、更に地域文化の発展のための取り組みについて調査を継続し、今後の課題と合わせて調査報告書に反映したいと考えている。
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