研究概要 |
本研究は、ミャンマーにおける国民統合の過程とそこに含まれる問題を再検討することを目的とする。その手法としては、ビルマ族仏教徒中心の国民国家建設の中で、結果的に「国民」の最も周縁に置かれてしまったムスリム住民の実体験や彼らの持つ資料を詳細に検討する。移民の祖先であり、民族的にも宗教的にもマイノリティである彼らが自らをどのように国民国家に位置づけようとしてきたのかに注目し、ミャンマーの国民概念、国民統合を再検討していく。平成22年度に実施した研究は下記の通りである。 (1)1920年代~30年代にナショナリストの想定していた「ビルマ人」概念を検討するため、愛知大学所蔵の植民地期の新聞(トゥリヤ紙)分析の事前準備をおこなった。平成22年6月7日および8日に、愛知大学図書館にてトゥリヤ紙を閲覧し、まず1930年代初頭について、ビルマ人概念に関する記事、およびバマー・ムスリムに関連する記事を読み、必要に応じて複写を行なった。予想以上に記事があったため、平成23年度以降も継続する。 (2)平成22年7月6日から10日、フランス・マルセイユのプロバンス大学で開催されたビルマ研究国際学会において、本研究に関連して事前に行なっていた調査と本年度実施した研究に基づいて、口頭発表を行なった。発表題目は「The Self-positioning of Bamar Muslims as Citizens of Myanmar」とした。 (3)平成23年3月4日からミャンマー・ヤンゴン市およびマンダレー市において,現地調査を実施した。インタビュー調査と資料収集が主な目的であり、特にマンダレー市に重点をおいて、幅広くデータを収集した。マンダレー市は、王朝時代からイスラーム教徒が町や村落で仏教徒と混住しており、互いに関わり合うことが多い。仏教徒社会にイスラーム教徒がどのように位置づけられるのかについて、調査の価値があり、平成23年度も現地調査を行う予定である。
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