タイ・ラオスでは1990年代後半よりミャンマー、カンボジアなどから、合法・不法を含め、百万人以上の外国人就労者が流入し、新たな教育課題が生じている。外国人就労者の移動に伴う越境児童の数は数十万人を超えると言われており、学校不就学、人身取引、児童労働、無国籍児童などの問題を引き起こしている。本研究の目的は、こうした現状を踏まえ、グローバルな教育支援ネットワークおよび、タイ・ラオスでの教育協力ネットワーク形成について調査結果を報告することである。ラオス・サワンナケート県付近では、国境周辺の住民の経済活動、観光客の増加、労働移動といった面から、人の越境移動が活発化しているが、ラオスからの労働移動の多くが不法就労の形であり、それは児童の越境に関しても同様な問題である。サワナケート県の国境での調査の結果、特にラオス側からタイ側への越境児童の実情として、彼らは不法越境・不法滞在であるため、満足に基礎教育を受けられないまま、越境人身売買ないしヒューマン・トラフィッキング、移民による犯罪や麻薬・エイズ問題に巻き込まれるケースが多いことがわかった。平成24年度は「不就学の家族要因」「ネットワーク形成要因」解明のためにフォローアップ調査と総合的分析を行った。具体的な調査内容は①タイのニューカマー不就学要因を、諸要因間の関係から総合的に理論化する。②タイのニューカマー不就学に関わる家族要因の面接データを詳細に分析し、流動型家族と不就学の関係、流動型家族の教育戦略を解明する。③ニューカマー児童援助ネットワークの形成要因と有効性の解明:ネットワーク形成を促す諸要因、さらにネットワークが作るオルタナティブな教育方法や教育内容などの革新性や連携によるシナジー効果を理論的に解明する。以上3点を実施した。
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