本研究は、アフリカの自立的な経済発展のために有効な援助アプローチを検討する目的で、アフリカ支援を重視している欧米ドナー、及び東アジアへの援助経験を活かして近年アフリカ支援を強化している日本を対象に、産業開発支援の国際援助比較を行うものである。 今年度は第一年次として、(1)欧米諸国の援助理念や産業開発支援のアプローチ、アフリカにおける支援実施状況(事例としてのエチオピアを含む)、(2)東アジアにおける日本の産業開発アプローチの特徴やアフリカ諸国に適用する際の課題等、について基礎情報の収集と分析枠組みの検討を行った。 具体的には、次のとおり、専門家・実務家との勉強会及び現地調査を実施した。 ・アフリカ産業戦略勉強会を4回開催し、欧州ドナーと日本の産業開発支援アプローチの比較、日本のアフリカ産業開発支援の現状と提案、アフリカの民間セクター開発の現状、英国の新しい民間セクター開発支援(BOPビジネス)の取組み等について、発表や意見交換を行った。 ・現地調査はベトナムと米国で実施した。ベトナムでは東アジア型の産業開発支援、米国ではオバマ政権が2010年に打ち出した成長支援を重視する新しい国際開発政策を中心に調査した。 またアフリカの事例として、米国・英国・ドイツ等の対エチオピア産業開発支援の考え方や具体的な支援について、文献レビューと会議参加を通じて情報収集と分析を開始した。 これらの活動の成果を各種雑誌・出版物で発表するとともに、2011年2月にOECD開発援助委員会(DAC)と国際協力機構(JICA)の招聘で「China-DAC研究会」(於エチオピア)に参加し、日本を含む東アジア型の産業開発戦略をテーマに発表を行った。本研究会には欧米ドナー、中国、アフリカ諸国が参加しており、第一年次の研究成果の妥当性を確認し、来年度以降の活動方針の示唆を得るうえで有用だった。なお、日本と欧米ドナーの成長支援アプローチの比較に関する文献出版について、Routledge社と交渉中である。
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