本研究は、日本とラオスの大学研究者が、ラオス農村で活動するNGO関係者と農民の連携協働による農村開発活動に協力参加した当事者的研究を志向している。 ラオスの農村生活から急速に消えつつある伝統文化や「在地の知恵・技術」を積極的に評価、再認識するため、ラオス国立大学農学部のプログラム、東南アジア研究所実践型地域研究推進室とラオス国立大学農学部ラオ伝統農具農民博物館が協働で実施している「集落民俗文化資料館」を通した伝統的文化の保存活動を「農村開発実験」と位置づけ、その活動の実践に積極的に参加し課題に取り組んだ。本年度は、新しく「集落民俗文化資料館」が設置されたビエンチャン市タチャンパ村とアッタプー県ラーニャオ村の2村における建設に向けた住民参加の手続きとプロセスの記録と関係者の聞き取り調査を行った。また、タチャンパ村においては、民俗文化資料館の運営や維持管理、文化の保存活動に対する住民の意識や見解を、参加型学習行動法(PLA)の手法を使って明らかにした。そして、これら得られた結果をもとに、民俗文化資料館の活用や伝統的文化の保存を集落の持続可能な活動とするための活動計画を集会をとおして村人と共有することを試みた。 以上の結果、政府の定住政策で数民族が移住して村ができた、歴史の浅いタチャンパ村では、それまで互いに他民族について知識も関心もほとんど持たなかった村人の間に、民俗文化資料館の活動に参加することによって、他の民族の文化や歴史に関心を持つ人が見受けられ始めた。そして、村の集会で伝統文化や道具の保存が自分たちの民俗にとって重要であるなどの意見を述べる村人が現れている。すでに、民俗文化資料館を村の共通の財産として活用する計画が作成されており、文化資料館を通した新しい村の歴史作りと村づくりのモデルの方向性が見えてきたと自負している。
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