研究課題/領域番号 |
22510265
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢嶋 吉司 京都大学, 生存基盤科学研究ユニット, 研究員 (90444489)
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キーワード | ラオスの農村 / 集落民俗文化資料館 / 伝統的文化 / 在地の知恵・技術 / 実践型地域研究 / 住民参加 |
研究概要 |
本研究は、日本とラオスの研究者がラオス農村住民と協働・推進している農村開発活動に参加する実践型地域研究による当事者的研究を志向した。ラオスの農村生活から急速に消えつつある伝統文化や「在地の知恵・技術」を積極的に評価、再認識する東南アジア研究所実践型地域研究推進室とラオス国立大学農学部ラオ伝統農具農民博物館が協働で実施する「集落民俗文化資料館」活動を伝統的文化保存を通した「農村開発実験」と位置づけ、その活動に参加し課題に取り組んでいる。 本年度は、ビエンチャン市サイタニー郡タチャンパ村集落民俗文化資料館の住民たちによる活用と運営の確立に向けた活動(平成22年の参加型学習行動法(PLA)の成果、民俗文化資料館の運営や維持管理、文化の保存への住民の意識・見解のフォーローアップ)支援、住民参加の手続きとプロセスの記録に加え、村人による村の記録作成に向けての聞き取り調査を村人と協働して進めた。また、伝統文化の保存の実践を村人たちとの共有する活動の一環として、村の伝統的な遊びや芸能(歌・踊り)イベントをサイタニー郡郡長など行政関係者の出席を得て開催した。 多民族の移住でできた歴史の浅いタチャンパ村では、集落民俗文化資料館設置とその活用プロセスへの村人の参加機会を通して、それまで他民族について知識も関心もほとんど持たなかった村人の間に、互いの文化や歴史に関心を持つ動きが出てきた。そして、伝統文化や道具の保存が自分たちの民族にとって重要であると考える村人が増えている。 研究者との協働は、村人自身による文化や生活など村の記録を残したいという希望を生み出しており、経済的なインセンティブに頼らない村づくりの方向性が見えてきた。 また、タチャンパ村における活動は現地行政の高評価を得ている。以上から、集落民俗文化資料館を通した村の歴史、村づくりのモデルの有効性が示されていると自負している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
経済的インセンティブの少ない集落民俗文化資料館活動による伝統的文化や道具の保存を通した村づくり・農村開発に対して、当初の予想を上回る村人の参加が得られた。集落民俗文化資料館の活用と運営は村が責任を持って行う体制がつくられた。その上、村人たちの間には、自分たちで村の記録を残したいという声が上がっており、新しい村づくりが生れ始めていると実感される。以上の理由から、当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ当初の計画以上に進展していると考えており、本研究課題の今後の推進方策を大きく変更をすることなく継続する。加えて、上記のように、村人の間に村の記録を自分たちで残したいという意欲が現われており、その意欲を育成し、村人たちの希望の実現を支援する取組みを増やす予定である。
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