研究課題/領域番号 |
22510267
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
思 沁夫 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 特任准教授 (40452445)
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キーワード | ニンジャ / ゾド(自然災害) / 鉱物資源 / 自然環境 / 地域社会 / セーフティネット / 信仰 |
研究概要 |
本研究課題の目標は、モンゴル国オブルハンガイ県のオンギ河流域における"ニンジャ"(沙金を採掘する集団、あるいは個人)の活動実態(自然環境に与える影響を中心に)、ニンジャ組織の構成、特徴及び周辺民族との関係を聞き取り調査、遊牧民との交流などを通じて明らかにし、ニンジャと遊牧民との対立関係、非循環的な自然利用から地域社会の再生と自然環境の持続的利用の可能性を構築することである。平成23年度は、以下のような調査研究を行なった。 (1)客観性と中立の立場から"ニンジャ"たち(20人)の活動、生活、家族構成及び政府や周辺住民、遊牧民との関係を記録したドキュメンタリ映画(「"ニンジャ"の新年」35分)をモンゴルの民間テレビ局と共同で作り、また、そのテレビ局を通じて放送した。本ドキュメンタリ映画(映画を作るため430時間以上の撮影を行なった)は、貴重な記録であると同時に、客観的な報道がほとんど見られないモンゴルのマスメディアにおいて、客観的にニンジャン現象を考える数少ない情報源になったと考えられる。 (2)本研究がスタートした時点から進められているツェブルワンチグドルジの経典(オブルハンガイ県の自然環境と人間関係に関する部分)解読作業は終わり、本研究テーマと関係する経典内容の翻訳(チベット語からモンゴル語)及び詳細な注、解説を付けた本(報告書)をモンゴル国仏教大学の協力を得て、モンゴル語で出版した。この研究成果は、地域社会の再生と循環的自然資源の利用を考える上で、大変意義あるだけではなく、モンゴルの仏教研究にとっても、また、地方生態史の研究などにとっても意義あるものと考えられる。 (3)2011年8月アルベイヘイル町で、地域の政府関係者、環境保護者(NGPの代表者)を召集し、ワークショップを開催した。本ワークショップを通じて、ニンジャが置かれる状況、生まれる原因など研究成果を報告すると同時に、彼らと意見交換し、情報収集することができた。政府関係者と環境保護者が一緒になってニンジャ問題を議論するのは、今回が初めてである。また、研究成果を地域に伝え、社会的な実践に活かす目的も果たした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
その理由概ね2つある。1つは研究代表者がモンゴル人出身であるため、ことばや人間関係作りがスムーズに進んだ。もう1つは、モンゴル側の協力によって、文献解読など時間かかる作業が早く進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は本研究の最終年度であるため、以下のように研究を進めたいと考えている。モンゴル国立大学と共同で"ニンジャ"に関する国際シンポジウムを開催する(2012年9月5日と6日)。シンポジウムを通じてニンジャに関する研究を推進すると同時に研究成果をモンゴル社会に公表する。モンゴル政府と地方政府にニンジャ現象、「分断社会」問題を解決するための提案書を提出する。研究成果を、論文や報告書の形でまとめ、発表する。
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