研究対象地であるミクロネシア連邦は西からヤップ州・チュック州・ポンペイ州・コスラエ州の4州から構成され,ヤップ州以外の3州ではデング熱媒介蚊の本格的な調査は行っていなかった.本研究費により平成22年度にポンペイ州,平成23年度にチュック州で蚊の調査を実施し,デング熱を媒介する可能性がある蚊(Aedes hesilli,Ae. aegyptiおよびAe. albopictus)の分布状況を明らかにすることができた.この情報は州政府に提供し,デング熱対策に役立っている. ミクロネシア連邦のコスラエ州ではこれまで本格的な調査を行っていなかった.しかし,コスラエ州に隣接するマーシャル諸島でデング熱の流行が発生したことから,平成24年度はコスラエ州でデング熱媒介蚊の分布調査を実施した.その結果,Aedes albopictus,Ae. marshallensis,Culex quinquefasciatus,Cx. annulirostrisおよびCx. kusaiensisの5種類が採集された.この結果から,コスラエ州でデング熱を媒介する可能性があるのは Ae.albopictusと考えられた. 本調査の3ヶ月後の平成24年10月にはコスラエ州でデング熱の流行があり,50名以上の患者(30名以上の入院)の発生が確認された.本調査で採集された蚊の同定作業と分布状況の整理を急ぎ,ミクロネシア連邦政府,コスラエ州政府およびコスラエ州に派遣されたWHO関係者に蚊の分布状況に関する情報を提供した.本調査成果はデング熱媒介蚊の対策での重要な情報となっている. 3年間の本研究で得られた成果は,次の研究の基礎となり,ミクロネシア連邦の2小島でのデング熱対策としての媒介蚊対策につながっている.ポンペイ州とコスラエ州の結果は2編の論文として投稿済みで,ポンペイ州については論文原稿の作成を行っている.
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