研究課題/領域番号 |
22510272
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
林 裕明 島根県立大学, 総合政策学部, 准教授 (30336903)
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キーワード | ロシア経済 / 経営者 / 労働者 / 労働インセンティブ / 生活様式 / 国家の役割 / 市場経済化 / 伝統的要素 |
研究概要 |
今年度は、経済システムと労働インセンティブとの相互関係を再検討するとともに、昨年度構築した経済システム転換と労働インセンティブの変化との関係についての分析枠組みを活用して、日本とロシアにおける労働インセンティブの比較研究をおこなった。 まず、従来、労働インセンティブは個々の企業あるいは労働者にとっての課題と考えられ、主として経営学あるいは心理学の領域において研究蓄積がなされてきたが、労働インセンティブを規定する要素として経済システムに着目することによって、労働インセンティブを経済学の領域において捉え直す必要があることを確認した。 次に、日本とロシアの労働インセンティブ比較から、両国とも経済システムの変動によって労働のあり方および労働へのインセンティブに変化が生じていること、日本では市場経済化の影響が労働領域にも強く作用しており、一方で労働インセンティブを強化しているとともに、他方では過労死をはじめとする社会問題を発生させていること、逆にロシアでは国家および伝統的要素が労働面における市場経済化の直接的な影響を回避させる役割を果たしており、生活の安定性を高める反面、労働インセンティブの強化にはつながっていないことを明らかにした。 上記に加え、ロシア(ヤロスラブリ)にて企業訪問をおこない、経営者および労働者に対して聞き取り調査を実施した。ロシア企業における労働インセンティブを検討する上で、ロシア社会の独自性を考慮する必要性があること、他方で、労働インセンティブをめぐる制度を有効に機能させることによって、ロシア企業においても先進国と同様に高い労働生産性を達成しうることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目には、経済学の領域において労働インセンティブを研究するための分析枠組みを構築し、2年目には、日本とロシアにおける労働インセンティブ比較およびロシアでの実態調査を実施することができた。これまでのところ、おおむね順調に進展していると考える。最終年度となる本年度は、再度ロシアでの実態調査をおこなうとともに、研究成果の公表を中心におこないたい。
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今後の研究の推進方策 |
企業における意思決定をめぐる非公式のルールを中心に、昨年度おこなったロシアでの実態調査では明らかにしえなかった課題について、実態調査を再度おこなう予定である。あわせて、これまでの研究成果をもとに、学会報告等の形で研究成果の公表をおこなう。
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