研究概要 |
本研究では,体制移行期を経て新段階にあるロシアのジェンダーの状況を明らかにする。具体的には,家事,育児,高齢者介護等のケア労働をめぐる社会関係と社会制度を日本と比較することによって,ジェンダーや家族の視点から分析する。特に,ケア労働の担い手,それをサポートする地域社会や地方行政,国家の家族・福祉政策について,また規範がジェンダーにどのような影響を与えているかについて検討する。より具体的には,(1)出産・育児支援システムを明らかにすること,(2)老人介護,高齢者就業,老齢年金の現状の把握,(3)(1)及び(2)とロシアの規範との相互関係を探る,(4)日本との比較によりロシアのジェンダー政策を中心とした社会政策を提言することを目指している。 23年度は,ロシアペテルブルグ、エカテリシブルグ、ウラジオストク、カザンにおいて幼稚園および老人介護施設の調査を実施した。ペテルブルグでは州にあるロシア正教関係の老人ホームと3か所の幼稚園、エカテリンブルグでは幼稚園、ウラジオストックでは老人ホーム、カザンでは老人ホームを調査した。カザンはイスラム教徒が多いためほかのロシアの都市と異なるのではないかと思っていたが、それほど大きな違いはなかった。しかしながら、人々の老人介護をめぐる意識は変化しているようである。
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