本研究は、近年著しい経済成長を遂げるインドにおいて、都市スラム家計の生活水準変化とその次世代教育への影響について分析することを目的としている。とくに、研究代表者が2007-08年に調査した首都デリーのスラム家計を2011-12年に追跡調査し、5年間の消費・所得を含めた生活水準の変化とその子供たちの就学状況、学校選択への影響に焦点を当てる。平成22年度は本研究の初年度にあたり、主に以下の成果があった。 1.現地での予備調査:2011-12年度の調査に向けたスラム全体および家計調査票の検討。 2.全国標本調査(National Sample Survey : NSS)の分析:前回のスラム調査(2007-08年度)と同じ年に実施された教育ラウンドの個票データ分析(デリーのみ)を行い、スラム調査の結果との比較を行った。その結果、就学率に関してはデリー全体(88.6%)とスラム(68.1%)で大きな差がみられ、とくに8歳をピークに就学率が下降する点がスラムの特徴として浮かび上がった。男女、カースト間の有意な差は見られず、宗教間の就学率の差がみられるという傾向は、デリー全体とスラムの子供に共通していた。また、就学していない最大は、スラムでは教育費の負担であるのに対し、デリー全体では勉強への興味を持てないことであるという違いがみられた。近年、都市部では小学校から私立に通う子どもが増加していると指摘されるが、スラムではそうした子供は少ない。これらのスラムの子供の就学の特徴が引き続きみられるかどうか、その原因は何かを探ることができるような質問を2011-12年度の調査に含めることにしたい。
|