本研究は、近年著しい経済成長を遂げるインドにおいて、都市スラム家計の生活水準変化とその次世代教育への影響について分析することを目的としている。インドでは、高い経済成長の陰で都市部の所得不平等化が一層進み、農村からの労働移動の増加と雇用の伸びの影響などから都市の貧困者数は増加の一途をたどっている。本調査では、研究代表者が2007-08年に調査した首都デリーのスラム家計(417世帯)を2011-12年に追跡調査し、5年間に消費・所得を含めた生活水準にどのような変化が起こったのか、またそれが子供たちの就学や労働にどのような影響を与えたかに焦点を当てるものである。 2012年のスラム世帯再調査では、前回調査世帯の3分の2にあたる世帯を追跡できた。残り3分の1の世帯は前回調査世帯と同じスラム地域から世帯構成、社会階層(カースト)の似た世帯を選び、全417世帯の調査を終えた。 世帯調査終了後に調査対象地域外のスラム地域においてNGOの協力をもとにフォーカス・グループ・ディスカッションを実施した。過去5年間における教育制度の変化、具体的には義務教育法の導入や留年制度の廃止などがスラム世帯にどのような影響を与えたかについて理解を深めることができた。
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