研究課題/領域番号 |
22510283
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石黒 久仁子 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (90573915)
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キーワード | ジェンダー / 経済・労働 / マネジメント / キャリア開発 |
研究概要 |
当研究は、日本企業における女性社員のマネジメントの中心ポジションへの進出の遅さを、日本企業・外資系企業の人事管理制度を中心に比較分析・考察することを目的として開始したが、平成22年度より研究スコープを欧州企業に広げ、政府の女性・育児・福祉政策と企業のマネジメント戦略の不整合性の問題を中心として事例研究を実施することとした。本年度は引き続き欧州各国の制度とマネジメントに関する文献をレビューしながら、欧州調査を中心として活動を実施した。事例調査の中心は2012年2月にフランスで実施し、合計3社6名の女性管理職と、1名の国際機関勤務の女性、1名の特許事務所勤務の女性に対してにライフヒストリーのアプローチを用いたインタビュー調査を実施した。フランスは近年女性の出産と子育てを促進する施策を取っているが、企業内マネジメントにおける女性の地位は日本同様に低く、本研究で着目する、女性・育児・福祉政策と企業のマネジメント戦略の不整合性という点で示唆する点が多くあった。見出されたいくつかの問題点の中で特に際立ったのが、1)社会における階層差とそれによる様々な機会の差、2)学歴が卒業後の進路に及ぼす影響の大きさ、3)人々の価値観や組織内に残る男尊女卑の価値観、4)出産・子育て促進政策による女性のキャリア形成への妨げ、5)経済環境が悪化することにより、上記4点が更に強化されている状況、である。 以上の結果を踏まえ、一国の社会規範や文化という理由づけでは説明しきれない状況を、社会と企業マネジメントに内在する様々な障碍や格差と政府の施策との連関を中心に分析することにより、雇用とマネジメントの分野での女性の問題を更に深く理解し、将来の企業マネジメントと人々のキャリア形成に役立てることを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の平成22年度、2年目の本年度の活動を通して、事例の収集と文献のレビューをかなりの割合で実施することができた。次年度は、2年間の結果を基に事例のフォローアップと成果発表に注力したい。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、事例研究と文献レビューより多くの知見を得ることができた。今後は事例のフォローアップと、できる限り新たなデータの蓄積を進めながら成果を発表していくごとに加え、平成25年度以降の研究の更なる発展の為に、本研究で十分調査しきれなかった点や、新たに浮かび上がってきた問題などに注目し、国際共同研究も視野に含めた課題設定を並行して実施する必要がある。
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