近代教育システムにおいて、視覚メディアは必須の教育ツールとして機能し、学生・生徒は多様な学校イベント教材・教具を通して視覚文化を受容し、学んできた。例えば、教科書や掛図という道具、展覧会や博覧会または修学旅行などの各種見学・研修、運動会・学芸会などの表現活動などを含めて、本研究は「見る」「見られる」という視覚を通じた文化の授受-特に女子教育制度における-について明らかにするものとして、調査・研究を行ってきた。特に、近代女子教育において視覚文化の授受がいかなるジェンダー規範と連関を持ち、またその規範獲得に視覚文化がいかに機能したのかを明らかにすることを目的としている。 22年度は、調査の受け入れ状況に対応し研究計画を変更し、特に女学校における「展示」と「表現」(視覚表現を行う側に女学生を位置づけ、空間・身体による視覚文化の発信とその文化的受容そして展開について)の調査研究を行い、「踊る女学生の身体-教育空間に示された近代的女性身体」というテーマで成果報告論文を執筆しまとめた。 従来の運動会研究において重視されてきた学校と地域のコミュニケーションの問題および体育教育におけるダンスの研究から、学校空間において踊る女学生とそれを見る地域社会の関係が、女学校システムを視覚化し伝播させていく機能を持ちえたことを明らかにした。 これは従来の学校教育における視覚イベントが、単に地域コミュニティと教育システム間の問題としてだけでなく、「教育」そのものの広報的媒体として機能し、また特に「女子教育」を機能・伝播させるものであったという新たな意味を見出すものである。
|