研究課題/領域番号 |
22510291
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
荒木 映子 大阪市立大学, 文学研究科, 名誉教授 (50151155)
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研究分担者 |
高橋 章夫 大阪市立大学, 文学研究科, 非常勤講師 (10527724)
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研究期間 (年度) |
2010-10-20 – 2013-03-31
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キーワード | 第一次世界大戦 / ジェンダー / 犠牲 / 記憶 / 戦場 / トラウマ / ナショナリズム / 記念碑 |
研究概要 |
今年度の「研究の目的」とした、四つ(地誌的・記念碑的・象徴的・機能的)の集合的記憶の「場」のうち、研究代表者は、戦争墓地を中心とする「記念碑的な場」の視察と、手記・自伝・文学作品のような「機能的な場」についての研究を行った。前者については、まだ研究の途上にあるが、後者については、女性の戦争貢献に関する資料と手記を研究し、論文にまとめた。一つは、第一次世界大戦における日赤の救護看護婦の欧州派遣についての論文、もう一つは、西部戦線の野戦病院で働いた二人のアメリカ人看護婦の手記についての研究発表と論文である(6月発行予定)。あまり知られていない日赤による救援活動と、英米の女性達による戦争貢献とをジェンダーと比較文化の視点から検討している。 研究分担者は、イギリス、フランス、ベルギーの博物館に所蔵されている兵士の手記や手紙を調査し、兵士の男性性を形成するにあたり、新聞報道によるプロパガンダがどのような役割を果たしたかを検証し、昨年度、一昨年度の研究成果と合わせて現在執筆中の博士論文「イギリスにおける第一次世界大戦の犠牲者像の諸相」にまとめている。また、軍隊での教育制度がナショナリズムの形成に及ぼした影響について論文を執筆予定である。 「犠牲」という視点にたてば、女性の払った犠牲は、兵士のそれと比べると、従来あまり顧みられず、「記憶喪失」の状態にあったが、新たな犠牲者像の歴史の研究が展開できそうである。 ジェンダーの視点を念頭において、大戦の犠牲者の表象を文学だけでなく種々の記憶の「場」にとらえることは、犠牲者像の多様性を浮かび上がらせるのみならず、新たなトラウマの歴史を書くことを可能にした。戦争は男性性、女性性を規範に戻すように思われるが、実際には、ジェンダー規範を逸脱し、性にかかわらない犠牲者の表象を生み出したことを検証できたことの意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
理由
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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今後の研究の推進方策 |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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