本研究は、1945年から「復帰」前の1960年代までの戦後沖縄における女性の労働について、移動の視点から考察することが目的である。沖縄は近代以後、有数の「移民県」である。戦前の移動に関して研究成果も多い一方、沖縄戦後については十分ではない。「復興」の中で労働を支えた女性達は、生活のため、また学業や専門技術習得のために「生まれ島(故郷)」を離れ、近隣の琉球諸島の島々との間で、またヤマト(本土)や海外へと海を渡っている。その規模・内容について、公文書・統計・新聞など各種文献資料と個人史・証言の内容を参照することが必要であり、その上でより動態的な実態を明らかにするため、本年度は以下のことを念頭に先行研究を整理し、IICS Monograph seriesにまとめた。 1. 沖縄戦後史における政治・経済研究、女性史研究、移動に関する研究動向について整理し、資料の所在、内容について再検討した。特に、戦後沖縄における政治・経済構造の変化、女性労働・労働力移動、証言や個人史に焦点を当てて、研究史の整理を行った。 2. 近年復刻版の刊行された該当時期の新聞資料(『うるま新報』、『琉球新報』『沖縄新民報・自由沖縄』など)から、沖縄の女性史・女性労働・労働力移動に関する記事を調査し、地域ごとに整理した。 3. これまでに刊行されてきた資料集、図書館・公文書館に収集されている文献資料から、沖縄の女性史・女性労働に関するものを収集し、整理した。 4. 離島を含め、沖縄の県市町村史編纂事業における資料、証言・記録集、新聞・雑誌などから、女性労働に関する部分を収集し、整理した。
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