研究課題/領域番号 |
22510297
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
風間 孝 中京大学, 国際教養学部, 准教授 (50387627)
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研究分担者 |
菅沼 勝彦 大分大学, 国際教育研究センター, 講師 (10550410)
河口 和也 広島修道大学, 人文学部, 教授 (10351983)
堀江 有里 立命館大学, 産業社会学部, 講師 (60535756)
清水 晶子 東京大学, 大学院情報学環, 准教授 (40361589)
谷口 洋幸 高岡法科大学, 法学部, 准教授 (90468843)
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キーワード | クィア / セクシュアリティ / ジェンダー |
研究概要 |
本研究グループは、セクシュアリティおよびジェンダーと、階層・階級、人種・民族、地域、国籍といった軸との交差に焦点をあて、日本におけるクィア・スタディーズを展開している。理論班ではクィア・スタディーズあるいはクィア理論に関する英語文献で未だ日本語へ翻訳されていないものを中心に解読・整理を行った。文献の多くが一つの学問の体系に捕われない多様な方法論又は解釈法を使用しており、クィア・スタディーズ自体の広がりにも連動していることを確認した。つぎに、日本の文脈においてクィア・スタディーズを展開していくさいに重要であると考えられる4つのテーマのうち、(1)生活班では、前年度に実施した性的マイノリティ・性の多様性にかかわる質問票調査のレビューをふまえ、次年度に実施する大学生を対象とした質問票の設計を行い、知識・認識・態度を説明する変数として社会経済的属性を取り入れた。(2)健康班では、クィアな生を営む人々の「健康」阻害要因を見出すため、①男性同性愛に関する1980年代の言説分析、②セイファーセックス啓発とセクシュアリティをめぐる言説の分析、③性的少数者のピア・サポート現場にみる精神的ケアのニーズと課題、のテーマで文献等の分析、参与観察を遂行した。(3)教育班では、クィア・スタディーズ入門公開講座の講師役院生のリクルート、講座形態の再考や講義内容の決定などの準備を行い、全6回にわたる公開講座を開講した。また、「クィア・ペダゴジー」の学術論文の検討および日本での可能性についての考察を進めた。(4)法制度班では、性同一性障害者特例法(2004)を基軸として先行研究を網羅的に整理し、法学や社会学などの分野において、同法が批判的に捉えられている現状を把握した。その上で ①条文内容にもとづく法内在的な問題点、②同法の規定と性別二元制・異性愛主義との関係、③同法施行後の法的影響の3点について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、理論班、生活班、健康班、教育班、法制度班の5班構成で研究を遂行している。理論班ではクィア・スタディーズの方法論の整理が進んでおり、生活班では「一般」集団を対象とした調査の可能性が検討されている。健康班ではセクシュアル・マイノリティの健康に関連する概念の使用実践や歴史研究が進み、教育班では学術成果の伝達の場の設定がおこなわれており、法制度班では国際人権基準の適用における国境・文化・宗教の差異やアジアにおける共通性の模索が検討されている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる2012年度においては、5つの班のこれまでの取り組みをふまえ、ジェンダー/セクシュアリティと階層・階級、人種、民族、地域、国籍の交差が日本においてどのような形で現れているかを明らかにすることに努める。そのうえで、日本においてクィア・スタディーズを展開していく上での課題を明らかにし、クィア・スタディーズの研究成果を社会還元するための可能性を検討する。
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