G・E・ムーアの判断論を中心に、20世紀英国の新実在論がどのように成立したかを検討した。ムーアはカント哲学が経験論のドグマに阻まれてその超越論哲学のプログラムを貫徹していないことを批判する。ムーアは真理を無時間的な概念の組み合わせへと帰着させる新しい判断論を提唱してカントの構想を実現しようとする。 本研究では、その結果ムーアが偶然命題について奇妙な見解をもつに至ったことを示し、ラッセルの記述理論が命題の構成要素と命題がそれについての命題であるところのそのものとの峻別によってムーアの苦境を解決しうるものであったことを明らかにした。
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