研究概要 |
今年度は、本質主義において重要なコプラ的de re様相の論理形式について考察するために、実体の持続に関わる時間的なde re様相としての時制を含む文の論理形式について考察した。具体的には以下のとおりである: 時制表現とは、ある実体的対象において何らかの属性が例示される際の一種の「モード」としてのコプラ的de re様相を表す表現である。この際重要なのは、「実体的対象」の中核的本質として「耐続性」が含まれているということである。ここで想定されている属性の例示のモードとは、あくまでも属性例示における時間的側面に関するモードであり、実体的対象において成立している持続性としての耐続に関する還元不可能な独特のモードである。 このように耐続に関するコプラ的de re様相として時制を捉えると、耐続者としての実体的対象に属性を帰属させる各時制的命題は次のように性格づけられる: (a)過去命題:耐続者のこれまでの持続としての必然的持続における属性例化に関する主張。 (b)現在命題:耐続者の目下の持続としての現実的持続における属性例化に関する主張。 (c)未来命題:耐続者のこれからの持続としての可能的持続における属性例化に関する主張。 また、「コプラの副詞的修飾」としての時点指示とは、コプラを主語でも述語でもない独特のカテゴリーの表現として捉えたうえでそれに対する副詞的修飾を設定するということであり、主述文を「S-(tense,t)-P」という形式のものとして捉えるということである。つまり、主語としての「S」と述語としての「P」とが、一種の指標としての時点指定を伴う時制としての「(tense,t)」というコプラによって結びつけていることになる。この図式が、段階や時間的部分を主語と見なす「(S,t)-P」や「(S,t)-tense-P」とも、時点指示を述語の修飾と見なす「S-(P,t)」や「S-tense-(P,t)」とも異なっているところにその特徴がある。
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