今回のプロジェクトでは、アリストテレスの形而上学におけるエネルゲイア概念を検討したが、その過程で、二つのテーマのもとに研究を進めることとなった。つまり、一つには、その主著の一つである『分析論後書』の翻訳を行うことになり、いわゆる「論証的」知識における意義を解明の的の一つとし、第二に、ある意味では対照的に、倫理に関わる「知識」の可能性という観点から、アリストテレス自身がその有力な主張者の一人とされている倫理学における実在論における意義を、反実在論の可能性という視点から検討した。 『分析論後書』は、近々刊行される予定であり、倫理学の実在論の位置づけについては、『哲学の探究』において、大きな輪郭を描いた。また、アリストテレスにおける徳倫理の位置づけについては、新たな研究プロジェクトに引き継ぎ、若手の研究者との研究解を継続することになる。
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