本研究は各種の教育現場における「バリアフリー教育」の進展をにらみながら、そうした教育を支える社会や制度の望ましいあり方を社会倫理学の観点から構想しようとするものである。その際に機軸とするのは、《障碍》および《平等》という理念を再定義する(時代と社会のニーズに応じて「編み直す」unthinking)試みであり、研究代表者が考究してきた社会倫理学・社会正義の理論と現在の所属部局に設置された「バリアフリー教育開発研究センター」の実践とを相互に突き合わせる作業を通じて、ことばの真の意味での「応用倫理学」に取り組むことにほかならない。 初年度にあたる平成22年度は、国内各地の現場に赴いてバリアフリー教育の実態調査に従事した。 またバリアフリーの教育と倫理に関わる文献の収集と読解も順調にスタートしている。 なお特筆すべき研究成果としては、(1)バリアフリー教育開発研究センターが主催したエヴァ・キティさんを囲むラウンドテーブルの司会・運営に携わったこと(2010年11月12日、東京大学教育学部第一会議室)および同センター主催の国際シンポジウム「人と人との間のバリアフリー-BARRIER-FREE JUNCTION」(2011年2月19日、東京大学福武ホールラーニングシアター)の総合司会を務めたことを挙げねばならない。
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