研究課題/領域番号 |
22520016
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
城戸 淳 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90323948)
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キーワード | カント / ロック / 観念 / 近代哲学史 / 理性 / ライプニッツ / 自由 / デカルト |
研究概要 |
本研究は、『純粋理性批判』を中心とするカントの理論哲学を近代哲学史のなかに位置づけ、デカルト、ロック、ライプニッツ、ヒュームなどの近代の哲学者とカントとの対話の地平を設定することによって、カント哲学の輪郭を切り出そうとする哲学史的研究である。平成23年度は、22年度のテーマであったデカルトの観念モデルのテーマを引き継いで、ロックの認識論との関係を研究主題とし、近代哲学史におけるカント哲学の位置づけを明らかにすることを試みた。その成果として、「学問と理性-啓蒙主義からカントへ」(『ヘーゲル哲学研究』)においては、ロックに端を発する啓蒙期の認識論からいかにしてカントの理性概念が立ち上がったかを素描し、さらに「想像力と共通感覚-カント哲学のコンテクスト」(『共感と感応-人間学の新たな地平』)においては、想像力や共通感覚などの基礎概念に関して、その哲学史的なコンテクストを跡づけた。また「人間的自由の宇宙論的本質について-カントの第三アンチノミーにおける自由の問題」においては、ロックやライプニッツなどの両立論的な自由論に対峙しつつ、宇宙論的な次元に人間的自由を定礎しようとするカントの姿を描きだし、とりわけその思想史的なコンテクストを浮き彫りにしようと試みた。前半の訳・解題を発表したピストリウスの書評は、まさにデカルトからロックへと継承された観念モデルと、カントの超越論的観念論との関わりを焦点とするものであり、来年度の研究へと受け継がれるテーマとなる。さらに、ロックとカントとの関わりについては、ロックの人格同一性の議論からカントの誤謬推理論にいたる思想史の研究を進めているところであり、24年度中には「ロックとカント」と題する論文として発表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カントの理論哲学を近代哲学史のコンテクストに位置づけるという研究目的に即して、現在、研究が進められており、その成果は順次発表されているところである。ただし、デカルトやロックなどの個別の哲学者について詳細な研究を進める必要もあり、作業はやや遅れている。また、いまだコンテクストの発掘にとどまり、当初の目論見であった「対話的哲学史」という段階にはいたっていない点も今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずは人格同一性をめぐる問題を切り口にして、ロックとカントとの「対話的哲学史」を実現する論文を上梓したい。 近代の哲学はラテン語、英語、フランス語、ドイツ語など、さまざまな言語に分岐して、その間の影響関係も複雑である。また、当時の文献を写真の画像にしたデータが大量に公開されつつあり、研究対象や手段が大きく変わりつつある。新たな資料に対応しつつ、錯綜した近代思想の脈略のなかで「対話的哲学史」を実現するために、いっそう精力的に研究を進める必要があると感じているところである。
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