研究課題/領域番号 |
22520019
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
金山 弥平 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (00192542)
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研究分担者 |
金山 万里子 大阪医科大学, 功労教授 (10093189)
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キーワード | 西洋哲学 / 西洋医学 / ガレノス / プラトン / アリストテレス / 自然学 / 情動 / 理性 |
研究概要 |
ガレノスの認識論、自然学、倫理学に焦点を合わせ、古典期・ヘレニズム期にわたる古代ギリシア哲学の歴史を見直そうとする本研究において、2011年度は、ガレノスの自然学理論とその背景、また情動と理性の関係を中心的に扱うとともに、彼の著作翻訳の作業も行なった。 1.研究代表者は、前半は、ガレノスの自然学・生理学理論の基礎にあるギリシアの四構成要素(火、空気、水、土)とそれら相互の変化、さらにそれらからのいわゆる同質素(肉、骨、腱等々)の構成に関するギリシアの基本著作であるアリストテレス『生成消滅について』の翻訳を行ないつつ、同理論に関する理解を深めた。同翻訳は近年のうちに新版岩波『アリストテレス全集』の一部として出版される予定である。また後半は、ガレノス『混和について』の翻訳を中心に研究を進めた。同書では、四構成要素の生物体における混和の問題が、医者にして哲学者・自然学者であるガレノス独自の視点から考察されている。三巻から成る比較的長い著作であり、翻訳の作業はまだ第一巻の途中であるが、2012年度中には完成にこぎつける予定である。 2.研究分担者は、ガレノス著作『最良の医師はまた哲学者でもあること』の翻訳を完成した。この翻訳作業を通じて、ガレノスにおける医術と哲学の関係、また医の倫理の問題について基本的知見を得ることができた。 3.理性と情動の関係は、医者であるガレノスにとって心身問題の一部として重要なテーマである。研究代表者はこれについても、広くギリシア哲学全体のなかで考察を行なった。現在の心理学において筆記が感情制御にもたらす効果に注目されているが、その関連でギリシアにおけるテクストの問題、またポジティブ心理学の諸問題をも考察に取り入れ、ガレノスを広い問題連関のなかで捉えようとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガレノスが典拠とし、また反省的に取り上げているアリストテレス『生成消滅について』の翻訳を完成した。またガレノス『混和について』の翻訳も集中的に始めることができた。 ガレノス『最良の医師はまた哲学者でもあること』の翻訳も完成し、他の哲学的著作の翻訳に向けて方向性と勢いを得ることができた。 情動と理性の関係についてもガレノスを視野に入れながら、現代心理学の幅広い問題連関のなかで考察できた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度中にガレノスの哲学的著作集(京都大学学術出版会)の刊行に必要な諸著作の翻訳をひととおり完成する。書籍それ自体の今年度中の刊行は不可能であろうが、次年度中の出版を目標として作業を進め、その過程で得られた知見を、研究として発表できるような形に逐次、まとめていく。
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