研究課題
今年度は、ガレノスと彼の思想的背景として、とくに自然学、倫理学に焦点を合わせた。前者についてはアリストテレスを中心に、後者についてはホメロス以来のギリシア思想の人間観、およびプラトンの幸福論、感情制御の問題を中心に研究を行なった。自然学については、ガレノスの自然学的著作『混和について』の翻訳を進めるとともに、そこで展開される混合概念、およびギリシア医学の基本でもある同質部分体とそれを構成する4基本要素の理論、さらに4基本要素(火、空気、水、土)の組成に関する理論を、思想的バックグラウンドでもあるアリストテレス『生成と消滅について』の内に取り押さえた。『生成と消滅について』は、平成23年度に一応仕上げていたその翻訳と注をさらに精確かつ読みやすいものにして、平成25年度からはじまる岩波書店新版アリストテレス全集用の原稿として完成した。現在、校正中であり、また索引も仕上げ、解説もほぼ完成している。倫理学については、情動を魂の統轄的部分の判断の誤りとして捉えるストア派的魂=プネウマ一元論に対抗してガレノスが採用したプラトン的魂三部分説と、情動制御の問題をとくに焦点に据えた。魂三部分説は、非理性的な情動を気概の部分と欲求の部分のどちらに置くべきか、また情動の二種類は一律に同じ仕方で制御されるべきであるか、という問題を生む。この問題は、情動への対処法としてアパテイア(無情動)を目指すか、あるいはメトリオパテイア(節度ある情態・情動)を目指すかというより大きな問題とも関係し、また今日の感情心理学とも関わってくる問題である。現代の心理学者、ダマシオはソーマティック・マーカー仮説に基づいて、情動制御の不可能性を主張したが、古代の哲学者たちはその可能性を模索した。この広い連関の中でプラトンの魂論を中心に古代ギリシアの情動制御の問題を研究し、その成果を論文として表わした。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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心理学ワールド
巻: 60号 ページ: 17-20
http://www.psych.or.jp/publication/worold_pdf/60/60-17-20.pdf
Journal of the School of Letters, Nagoya University
巻: 9 ページ: 1-20
名古屋大学教養教育院プロジェクトギャラリー「clas」アニュアル2012
巻: - ページ: 104-107
中部哲学会年報
巻: 45 ページ: 近刊
人文研究
巻: 43 ページ: 54-75
日本西洋古典学会HP:http://clsoc.jp/agora/essay/2012/120709.html
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