今年度(最終年度)は、昨年からの継続で、フィヒテの「意味の全体論」を、カントの判断論との詳細な比較検討を通して検討し、2012年4月にネブラスカ大学での国際会議で発表し、その時の質疑を踏まえて修正したものを、11月にボローニャ大学での国際フィヒテ協会で発表した。またその日本語訳を『フィヒテ研究』に掲載した。なお、英語原稿はさらに加筆して、来年度アメリカで出版される論文集に掲載の予定である。この研究において重要になった、アプリオリな知識とアポステリオリな知識の関係を解明するために、後期フィヒテの『意識の事実』(1813)を検討して、日本フィヒテ協会大会シンポジウムで発表した。このシンポジウムでは、後期フィヒテの「絶対者」の概念をめぐって私と他の研究者の論争になり、大会後「絶対者」概念についての再検討に取り組むことになった。後期フィヒテは、知だけがあるといわず、存在ないし絶対者があるという。そのことは、フィヒテが一方で物自体を否定するにも関わらず、他方で存在を認めることは一見矛盾しており、そのことがこれまで多くのフィヒテ研究者にとっては不可解な事柄であった。この問題を再検討するなかで、後期フィヒテの「絶対者」概念についての新しい解釈を得ることができた。2013年3月には、それを同志社大学での哲学研究会で発表した。論文および口頭発表原稿は(公開権に触れない限りで)私のHPで公開している。まだ論文として公表されていないものについても、共著や雑誌論文として2014年に公開の予定である。
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