本年度は、合意形成における「理由の来歴」概念を展開させて、意思決定モデルの一つとして、「予期的合意形成モデル(Prospective Consensus Building)」を創出し、他のモデルとの比較、分析を行った。その成果として、意思決定の価値構造の分析において、理論面では、合意形成の概念を時間軸に焦点をあてて深く理解することができた。他方、実践面では、医療・看護領域での倫理研修の依頼を受けて、本研究の成果を組み込んで実践者を対象にした研修、教育を行った。 本研究の成果は、アジア生命倫理学会で‘Prospective Consensus Building based on History of Reason and List of Risks’と題して発表した。また、本論文を発展させて、’Prospective Consensus Building- Ethical consideration on History of Reason and List of Risks’ をPhilosophy Study誌に投稿し、受理された(2013年5月刊行予定)。また、性と生殖に関する倫理の問題について、加藤尚美編『基礎助産学 第1巻 助産学概論』の「第4章助産師と倫理」を執筆した(2013年4月1日刊行)。 本研究の成果の一つとして、合意形成における関係者間における情報提供・共有の方法の検討および情報にかかわる「正義」という倫理的概念の検討が必要不可欠であるという認識に至った。そこで、平成25年度科研費基盤研究(C)に「人の生命・健康に関わる医療情報の価値構造の研究」と題して申請し、採択された。
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