本年度はこれまでの研究成果を整理しつつ、認知現象学的方法論の応用の結果得られたデータを分析し、それを現象学にフィードバックすることによる方法論の仕上げを遂行した。具体的には、過去2年間で収集した実験データ(作業療法士と一般学生による身体動作の二人称的記述と心的状態の記述、アスリートの身体技能についての一人称的記述)を現象学と認知科学にまたがる現代の研究成果を踏まえて分析した。以上の作業を通じて、他者の身体動作や心的状態についての外部からの記述と当人の一人称的記述の間に何らかの統一性を見いだすことで、身体動作と心的状態の記述に関する方法論確立の基礎理論を構築した。これらの成果については、Society for Social Studies of ScienceおよびThe Society for Phenomenology and Mediaの国際大会などで発表したほか、『思索』(東北大学哲学研究会編)に論文として掲載した。このほか、研究成果は、Glimpse(SPM)、『知の生態学的転回』全三巻(東京大学出版会)などに論文として掲載される予定である。また、The Evolution of Social Communication in Primates: a Multidisciplinary Approach(Springer)には論文を投稿中である。
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