伝統的な西洋哲学は心についての一人称的な記述に終始してきた。一方心の科学は、心や脳についての三人称的な解明を遂行してきた。同じ心を対象としながらも、方法論や考え方の違いによる両者の溝は埋めがたいものに思えた。本研究は、心の内部には本人にしか近づき得ないという古典的な考えを批判する現象学的な発想--他人の身体動作や表情がその人の心の顕現であるという発想--を出発点としている。その成果は、こうした発想のもと、外部から捉えた他人の心の状態についての記述が、心の科学に資する可能性を実験的に検証したところにある。
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