本研究は、わが国における歯科医療倫理学構築のための基盤的研究を目的とするものであり、そのために歯学部教育における歯科医療倫理教育のための倫理的検討事例の作成・収集を第一の課題とするものであるが、本年度第1回の連携研究者との打合せ会において、本年度は主として臨床研修歯科医の問題行動についての分析を先に実施することとした。いくつかの大学等で実施された過去の『歯科医師臨床研修指導歯科医講習会の記録』等に記載された「困った研修歯科医」の問題点を、研究代表者である樫が抽出し、パイロット的な分析を7月までに行い、7月に実施した第2回の連携研究者との検討会で報告した。その分析の検証と発展を目指して年明けの2月に千葉県船橋市のセミナーハウスで連携研究者に加えて研究協力者とともに、1泊2日の合宿形式でワークショップを実施し、歯学部学生が将来の歯科医療プロフェッショナルの一員として、歯学部教育において身につけておくべき基本的態度とは何かについて検討した。これは23年度にも継続してさらに検討する予定である。 なお、倫理的検討事例の作成・収集について上記のワークショップ参加者全員に依頼するとともに、倫理的検討事例の作成・収集のために必要な書籍を参加者全員に送った。 他方、抜去歯の教育研究利用については、研究代表者の樫が基本的な考えを日本医学哲学倫理学会において提示し、哲学・倫理学系の研究者に意見を求めた。基本的な考えは、抜去歯の教育・研究目的の保存について提供者から個別の同意を得ること、保存等については学内バンク化し、責任者を定めて連結不可能匿名化して一元管理すること、教育・研究利用については、誰がいつ何本いかなる目的で使用するかについて文書で明らかにした上で抜去歯の管理者から提供を受けることとした。なお、これについても、わが国および主要先進国の実情の調査を加えて、23年度の継続研究とすることにした。
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