研究課題/領域番号 |
22520036
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
上原 雅文 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (30330723)
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キーワード | 一遍 / 本地垂迹 / 神仏 / 踊り念仏 |
研究概要 |
1.神仏関係思想の研究:『一遍聖絵』に描かれた神々の記述を読み解き、一遍が関係したが神々を、一遍との関係に基づいて<教示する垂迹神><往生を助ける神><仏法を求める神>の3つに分類した。その上で、当時の垂迹思想には見られない「仏法を求める垂迹神」について考察し、論文(「『一遍聖絵』に描かれた一遍と神々-「仏法を求める垂迹神」をめぐって」)を公刊した。一遍の神仏関係思想は『興福寺奏状』などの一般的な垂迹思想とは異なり、自然神や死霊にも積極的に関わる志向を持ち、「実類神」のうちにも垂迹神を認めるなど、特異な内容と言える。ここには、仏法的な<知>と現実世界の景物をとらえる<感性>との重なりもしくは相互作用が見られる。それはまた、念仏によって現実世界(衆生界)と浄土とが重なるとする「十一不二」の名号思想とも関連すると思われるが、神仏関係思想と名号思想との原理的な関係については24年度に考察する予定である。 2.踊り念仏の研究:踊り念仏が追善供養・慰霊鎮魂の意味を持つ法会であることはすでに明らかにされているが、さらに、厳しい修行(「行道」)の意味持っていることを明らかにした。そして、踊るための臨時の建物を「踊り屋」と呼んでいる通説の誤りを指摘し、本来は「道場」と呼ばれていたのでではないかということを明らかにした。 3.『一遍聖絵』の絵画の研究:特に神社の絵画表現について、現在の地形図や景観と照らし合わせ、聖戒の指示による絵画表現の意味を考察した。また、『一遍聖絵』の詞書部分を解釈する際に絵画の参照が欠かせないことは当然であるが、なぜ聖戒がそのような表現方法をとったのかについて考察した。 4.実地調査:石清水八幡宮とその周辺の調査を行った。絵画では「よどのうえの」での踊り念仏が描かれているが、その地(3つの川の合流地点)の景観的意味を石清水八幡宮との関係で考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた『一遍聖絵』の絵画のデータベース化が実施できていない。予算に見合った適切な業者が選定できなかったためである。実地調査も十分に行うことができなかったが、これは23年度に東亜大学から神奈川大学に転出したため、予定外の業務に追われたためである。しかし、それ以外の文献蒐集・文献研究は順調に進み、その成果論文を公刊できた。
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今後の研究の推進方策 |
実施が遅れている『一遍聖絵』の絵画部分のデータベース化を、大学のスキャナーを用いて、簡略化された形にせよ完成させる。また、実地調査もできるだけ実施する。具体的には、鹿児島県の鹿児島神宮、愛媛県の大三島(大山祇神社)、岡山県の中山神社などを予定している。 文献蒐集は引き続き行い、文献研究も予定通り行う。今年度は最終年度であり、学会発表・論文公刊などの成果報告を積極的に行う予定である。
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