研究課題/領域番号 |
22520038
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
鈴木 康文 石川工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (50302336)
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キーワード | 哲学 / 倫理学 / 思想史 / 現象学 / 身体論 |
研究概要 |
本研究の課題は、フッサールの身体論の変遷と転回をたどり、特に彼の中期から後期・最晩年にかけての身体論がいかなる内在的動機付けに基づいて転回したのかを明らかにすることである。さらに身体に関わる事象で、その身体機能が発揮される条件としての世界の位置づけを、彼がどのように捉えなおしたかを辿る。この課題を達成するため、本年度も、昨年度と同様にドイツケルン大学フッサール文庫に滞在して、資料収集とその分析にあたった。 本年度はフッサールの1910年代(いわゆる『イデーン』期)を中心に、自己の身体が何らかの物に接触している事象をもとにして、その接触感覚から物、身体、さらには心という三領域がいかに構成されるのかを分析した。またこの事象を出発点とすることによって、この三領域の分類分けには自然主義的な態度における階層性(物を基礎として、その上に身体、さらには心が規定される)の論議が直接係わらないことを導いた。この議論を通して、フッサールのこの時期における身体論が自然主義的態度の制約の下に置かれていたとする通説には留保がつけられるべきことや、また自然的態度における身体の分析を遂行するその後フッサールが展開する流れを示した。 さらにこの中期フッサールの身体論の中で、その特徴を表す概念である「感覚態」や「局所づけ」を分析して、フッサール自身これらの概念を多義的に用いていることを明示した上で、その後彼が事象分析する中でこの多義性を克服していく方向性を示した。以上の成果の一部を、雑誌論文「フッサール現象学における実在性-物・身体・心」のなかで明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツケルン大学フッサール文庫に滞在して、身体論に関する遺稿の資料収集にあたり、その資料分析に従事した。またその分析をもとにして、平成23年度にフッサールに関する論文を一本執筆した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に引き続き、フッサール著作集の身体論に関する彼の論考を分析すると共に、ドイツケルン大学のフッサール文庫で遺稿の資料分析に従事する予定である。
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