研究課題/領域番号 |
22520040
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
吉永 慎二郎 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (70240330)
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キーワード | 春秋左氏伝 / 春秋左氏経 / 原春秋左氏伝 / 原春秋左氏伝からの春秋左氏経の成立 / 経の四種類型文 / 春秋経の作経メカニズム / 春秋左氏経文抽出・編作挙例 / 左氏経からの公羊・穀梁経の成立 |
研究概要 |
本研究は、今本『春秋左氏伝』に併載されている春秋左氏経文と左氏伝文との対応関係に注目し、春秋左氏経文が「原春秋左氏伝」文(今本左氏伝文中に相当部分が残存)からの抽出・編作を基本とし、加えて他史料の援用などの手法により成立したものであるとの仮説を提起する。そのうえで、これを二百四十四年にわたる「春秋左氏経文抽出・編作挙例」を制作して具体的・体系的に検証しかつ論証し、その過程で原左氏伝から左氏経が抽出・編作され作経されたメカニズムを明らかにせんとする。そしてこれの成果を踏まえて公羊経・伝や穀梁経・伝をも含む春秋テキストの成立過程、及び春秋学派の歴史的実態についても明らかにせんとするものである。 平成23年度の研究においては、まず春秋左氏経文が(1)抽出文、(2)抽出的編作文、(3)編作文、(4)無伝の経文、の四種類型文に例外なく分類しうること、これを十二公二百四十四年の全経文において分類し、各類型文の分布状況を明らかにした。即ち、(1)と(2)が43%程度、(3)と(4)が57%程度を占めること、前者が「原左氏伝」からの抽出系の経文、後者が「原左氏伝」に関連しつつも他史料の援用による編作経の経文であり、これによって本研究の仮説が実証的に論証されることを明らかにした。 次に、二百四十四年の全経文について「春秋左氏経文抽出・編作挙例」を制作し、上記の考察のさらなる精密化と体系化を進めた。既に隠公期、定公期、昭公期、哀公期については同挙例を論文として詳細の考察を付して公刊している。同時にこの過程で左氏経文の作経メカニズムについての体系的な見解を提示し、とりわけ春夏秋冬の四時に列国の史記を配して成立する「原左氏伝」の構成をさらに規範化することにより左氏経が作られたこと、経の正月即位法が原左氏伝より後出なことなどの重要な知見を提起した。 これらの成果は日本の中国学研究を代表する全国学会である日本中国学会(平成23年10月)や台湾大学における国際学会(平成24年3月)などで発表を行い多大の反響と注目を集めるところとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の提起する仮説の実証的論証をなす客観的データが得られるとともに、春秋経の作経メカニズムについての重要な原則がいくつか確認されるに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定通り今年度に本研究の集大成を成すことが可能と想定している。
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