宋代、特に南宋末期の士大夫の経書理解に関して交付申請書に基づいた研究を行い、上海図書館蔵紙背文献(『大学』『中庸』諸注)の解読、その著者である陳堯道の事績およびその系譜、同時代人との思想的交流を調査し、またその成果を国内外の学会で発表した。 ①国内史料調査……9月13日~16日、関西大学総合図書館において、紙背文献の著者である、陳堯道の事績およびその系譜、彼が生きた南宋時代に関わる史料(地方志や個人の年譜、南宋末から元代の四書註釈書など)の調査を行った。 ②国内研究会の参加および国内学会での発表……8月24日~26日まで、浜松市内で開催された「宋代史研究会」に参加し、宋代史および宋代思想の研究者らと紙背文献についての意見交換を行った。その後10月7日大阪市立大学で開催された日本中国学会第64回大会に参加。「南宋末、士大夫たちは「四書」を如何に読み解いたのか―上海図書館蔵『金匱要略方』の紙背文献に関する一考察―」と題した発表を行い、国内の中国思想研究者に紙背文献の存在とその価値を広く知らしめた。 ③国際シンポジウム参加……10月24日・25日、湖南大学で開催された「伝承与開拓―朱子学国際学術研討会」に参加。「南宋末期士大夫的『四書』解釈研究続論」という題目で発表し、主に紙背文献の著者陳堯道の系譜を明らかにした。 ④訳注作成……清末の学者劉師培が著した『経学教科書』訳注を作成して、『茨城大学人文学部紀要人文コミュニケーション学科論集』第13、14号にて発表し、宋代儒教の経書学史の一つの「見取り図」を提示した。
|