研究課題/領域番号 |
22520042
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
丸山 宏 筑波大学, 人文社会系, 教授 (00229626)
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キーワード | 道教儀礼 / 中国宗教 / 台湾 / 東南中国 / 『度人経』 / 道場科儀 |
研究概要 |
本研究は、道教儀礼の伝統の中で、六朝時代に成立した『霊宝経』、特にその中でも『太上洞玄霊宝無量度人上品妙経』(以下、『度人経』と略称する)の救済理論に基づき、宋元の時代の改変を経て現代にまで継承されている霊宝儀礼の伝統を研究の対象とし、この伝統の持つ中国宗教史に対する意義について、歴史的現代的視点から解明することを主要な目的としている。 平成23年度における本研究にかかわる活動と実績としては、主に以下の3点を挙げることができる。 第1には、平成23年7月にアメリカのコロラド大学で開かれたNEHセミナーに、テリー・クリーマン教授の招待を受けて、指導および解説の役割を担当する教授として参加し、この際に、アメリカ側研究者に対して霊宝儀礼の原型に関わる『霊宝五符序』および宋代の『上清霊宝大法』の煉度科儀を取り上げて、そのテキストの解読と意義の説明を中国語で行い、本研究に密接に関わる問題点をアメリカ及び台湾の研究者と討論することができた。 第2には、本研究の経費により、平成23年12月から平成24年1月に台湾の国立台湾師範大学、輔仁大学を訪問し、唐末から宋代の霊宝儀礼の文献解読の研究会に参加し、『度人経』に関する台湾における研究状況について知見を獲得し、現代の道教の死者儀礼の資料などを収集することができた。 第3には、平成24年3月にイギリスの大英図書館に赴き、清代福建潭州海澄県の道教儀礼マニュスクリプトを閲覧筆写し、当該地域の道教は台湾南部の道教と密接な関係があること、金〓の儀礼は存在するが黄〓の部分がないこと、歩虚詞が多く用いられる道場科儀は台南と共通することなどの異同を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな項目である『道蔵』所収の霊宝儀礼文献の解読、大英図書館の福建の写本の閲覧と分析については予定通り進めており、『度人経』の誦経音声の資料化も中半まで完成していることから、ここまでは順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進の仕方に関しては、平成24年度は最終年度の第3年目であることから、これまでの成果を整理することが重要である。すでに2年目までの経費により購入しているけれども、いまだ十分に検討していない台湾、福建以外の東南中国の霊宝儀礼文献を検討して、総合的に論点をまとめることと、後半が完成していない誦経音声の整理と資料化を完成させる必要がある。
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