前年度に引き続き、黄庭堅の題跋の会読研究会を二ヶ月に一度のペースで行った。内容はこれも前年と同様、午前中は宇佐美が題跋の訳注を作成してそれを約十名の研究者(半数は中国哲学、半数は美術史の専家)で検討し、午後は美術史の専家を中心に、当該題跋のモチーフあるいは画風を想見できる現存作品を検討するという形式で行った。なお、当該研究会とは別個に、黄庭堅の題画詩ならびに蘇東披の題画詩を検討して、黄庭堅の絵画理論に関する研究をすすめた。あわせて、中国絵画の図録(『中国絵画全集』(浙江人民美術出版社))のデータベース作成を行った。 研究会の成果は、当該題跋に関わる作品を検討することによって、題跋解読をより具体的イメージを伴って進めることができるという意義を持ち、単に黄庭堅の絵画理論研究のみならず、北宋代の絵画理論あるいは絵画史研究においても重要な情報を提供できるものと考えられる。また、図録のデータベース化は、上記研究会の作業にも重要な意味を持つが、研究代表者以外の、研究会参加者が将来行う研究にも役立つものと思われる。
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