本年度の主な研究目的は、中世禅宗の相伝資料について撮影・複写・筆写等によって多く収集することであった。そこで臨済宗系禅籍の相伝資料を多く所蔵している松ヶ岡文庫(鎌倉市山ノ内)について特に中心的に調査した。この松ヶ岡文庫の禅籍は重要文化財を含む貴重な典籍群であり、複写・撮影もできず、一般公開もされていない(書名のみが『松ヶ岡文庫研究年報』に公開されているが、登録番号は公開されていない)。そこで本研究では第1段階として約6000点の禅籍のカードをExcelに打ち込み、書名と登録番号等をデータ化した。その上で各写本・版本について原本を直接確認しながら書誌情報(奥書・刊記・装丁等)を打ち込んでいるところである。この調査の成果については「松ヶ岡文庫所蔵の禅籍について」として『松ヶ岡文庫研究年報』第25号に掲載発表した。この他には茶の水図書館成簣堂文庫(撮影・複写不可)において大徳寺派の相伝資料を閲覧し書写した。 また寺院関係の資料収集としては旭伝院岸沢文庫(静岡県焼津市)・広沢寺(長野県松本市)・長生寺(山梨県都留市)・大通寺(神奈川県小田原市)の資料も調査し、相伝資料を撮影した。 これらの収集した資料のうち、撮影された資料については、データを紙媒体に落とし、それぞれ製本をして整理した。 また相伝資料を含む中世禅宗の公案禅についての単著をまとめ、『中世禅宗における公案禅の研究』を刊行した(平成22年度科研費公開促進費採択)。
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