研究概要 |
平成25年度は、ジュニャーナシュリーミトラ『主宰神論』について、1,その英訳を完成させる。2, 訳注を完成させる。 3, 関連論文を作成する、等が主たる課題であった。1,については、試訳をハーヴァード大学パティル教授にチェックしていただく形で修正し、ほぼ完成を見ることができた。ただ、訳語の統一など、いくつかの問題も残されている。また、英訳を確定する時点で、校訂テキストの修正を必要とする部分もいくつか生じ、この点については、写本を参照しつつ、適宜校訂を修正した。2, については、3分の1程度が残った。ジュニャーナシュリーミトラ『主宰神論』前半のニヤーヤ学派の主張をまとめた部分については、比較的詳細な注をつけることができたが、後半の仏教側からの反論部分は、参考資料などが少ないため、関連資料を探すのに時間がかかった。3, については、一昨年度以来いくつかの関連論文を発表してきたが、平成25年度は、平成24年度に松本で実施された、東京大学が中心となって日本オーストリア二国間交流事業の一環として行われたセミナー「インド哲学の伝承―断片と伝承の変容」で発表した内容を論文にまとめ、Syaadvaadaratnaakara and Jnaanasrimitraと題して、インドから出版予定となっている(現在校正中)。この論文では、ジュニャーナシュリーミトラ『主宰神論』が膨大に、しかも、一部を除いて、その引用源を明らかにせずに、ジャイナ教文献に引用されている事実に注目し、テキスト伝承の具体的プロセスを引用されたテキストとの比較によって明らかにした。
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