本研究は、クメール文字、パーリ語で書かれた折本紙写本(一部貝葉写本を含む)の資料を用いてタイに流布した仏徳(ブッダグナ)の研究を行うものである。これまでに資料収集と調査を行っていた、バンコク地区のワットマハータートウ、その対岸のトンブリー地区所在のワットラジャシタラー、、ワットアルンそしてペトブリー地区の各寺院から撮影を許されて得ていた所蔵貝葉写本の影印データの整理を行い、その中の仏徳(ブッダグナ)に関係する資料を確認した。またこれまでに影印データを得ていたバンコク郊外のワットフアクラブ、ペトブリー地区のワットラット所蔵絵付折本紙写本の中の「偉大なる仏徳(マハーブッダグナ)」と題された経文を読み始めた。仏徳(ブッダグナ)については貝葉と紙両者の写本に書かれていることがわかったが、紙写本はクメール文字・パーリ語で書かれているが、貝葉写本には、その多くが現在では解読不可能なクメール文字・タイ語で書かれていることがわかり、貝葉写本についてはパーリ語のもののみを利用することにした。 そこでタイ所蔵の折本紙写本だけでは不充分であるのでフランス極東学院所蔵3本、ニューヨークパブリックライブラリー所蔵2本、ダブリンのチェスタービーティライブラリー2本の影印データを入手して研究代表者田辺和子が、これらを参照してワットフアクラブ寺院所蔵折本紙写本の「偉大なる仏徳(マハーブッダグナ)」と題されたパーリ文経文のローマ字転写を行い、研究分担者茨田通俊が和訳を行った。ミャンマーにもこれに近い仏徳文献があることがわかったので、研究協力者原田正美がミャンマー本の要約を行った。清水洋平はタイ写本の造形の説明をおこなった。タイの仏徳の注釈書も発見されたので舟橋智哉がその一部を解読した。写本研究家のフランス極東学院元研究員フィリオザ女史から提供された多くの文献、写本資料を加えて成果報告書を作成した。
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