本研究は、おもに日本とインドネシア(とりわけジャワとバリ)における「人と動物の関係」を、「生活の中の宗教性」という一定の宗教学的な視点から、比較分析しようとしたものである。当初は、これらの地域が対照的な文化バックグラウンドをもつということから、比較の尺度として、実際の関係の実態から導かれた「関係パターン」を用いることを試みた。 25年(最終年)度の研究からは、それぞれの研究地域における人と動物の関係において、もっとも顕著(かつ特徴的)に働いている宗教性の原理は、「関係パターン」よりも、自然(野生)と人間文化(都会)の二つの世界のつながりから成り立つ「関係タイプ」であることがわかった。 これによると、人と動物の関係には、「関係の場」(人間界、野生界、中間の世界、移行の世界)と「関係のかたち」(現実、仮想、部分・擬似)の二つの尺度から見て、15のタイプに分けて見ることができる。すなわち1)人間界・現実、2)人間界・仮想、3)人間界・擬似、4)野生界・現実、5)野生界・仮想、6)野生界・擬似、7)中間の世界・現実、8)中間の世界・仮想、9)中間の世界・擬似、10)人間界→野生界・現実、11)人間界→野生界・仮想、12)人間界→野生界・擬似、13)野生界→人間界・現実、14)野生界→人間界・仮想、15)野生界→人間界・擬似、である。 現代日本・バリ・ジャワには、いずれのタイプに近いものが、事例として現存するが、こうした図式から見るとことによって、個々のケースの特徴とその宗教性の本質を、が浮き彫りとらえることができる。
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