研究課題/領域番号 |
22520064
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
矢野 秀武 駒澤大学, 総合教育研究部, 准教授 (20422347)
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キーワード | 社会学 / 宗教学 / 政治学 / 東洋史 / 文化人類学 |
研究概要 |
本研究は、現在でも世界の約三分の一の国が有している非政教分離型の政教関係について、その政策と実態を把握することを目的とし、具体的には東南アジアの仏教国タイに見られる宗教行政を事例として、その政策と実態把握をすることを目標として掲げている。初年は、国家仏教庁、文化省宗教局、教育省教育運営イノベーション開発課といった、宗教行政の「中心部」に関する調査と資料収集を目的として調査を行い、2年目は、さらに宗教行政の「周辺部」の情報収集を目的とした調査を行った。ここでいう宗教行政の「周辺部」とは具体的には、宮内庁、観光・スポーツ省、社会開発・人間安全保障省、文化省芸術局、保健省における、宗教関連行政事業を意味する。これにより、タイでは宗教行政を中心的に取り扱う機関のみならず、それ以外の様々な行政機関において宗教関連行政が行なわれていることが明らかになった。この点は、タイにおいて宗教が行政活動を支える文化資源の一部であり、道徳教育、宗教文化維持、王室行事、観光資源、精神衛生、社会的弱者へのエンパワーメントなど、多様な使われ方をするものであることが見えてくる。これは、宗教と政治の関係を考える上で、貴重かつ重要な事例であるといえよう。 加えて、初年度の問題であった当該研究の関連分野を研究している専門家との人脈構築の問題は、引き続き開発の必要はあるものの、タイの大学教員や中学・高校の教員とのコンタクトを持つことにより、改善された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標であった宗教行政の「中心部」の活動把握、次年度の目標であった宗教行政の「周辺部」の活動把握という点では、それぞれほぼ重要な事例を収集し、概略を把握することができた。ただし、部の行政機関の活動や、法的な背景についての情報については、若干足りない面がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、外来宗教の活動を監督する部局や、タイ南部ムスリム集住地域の諸問題に対応する部局、仏教大学の活動などについての情報入手、宗教行政に関する歴史的変遷法的背景についての情報入手が必要である。また本研究を超える課題ではあるが、宗教行政活動の成果や実際の影響度について、行政関係者へのよりフォーマルな調査依頼の準備や、行政事業遂行現場での情報収集も必要となるだろう。 本年度はこれらの残された課題を中心に、研究活動を展開する。また、最終年度の研究活動として、タイの宗教行政全体の見取り図を明らかにし、理論的な考察へと進めていく予定である。
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