本研究では、キリスト教成立以来語られてきた「神と人間が一致する」というギリシア教父のテオーシスの言説に注目し、「神人合一」を説くドイツ神秘思想の教説を、教義上神であると同時に人であるとされるイエス・キリストを画いた「キリスト図像」と比較して、その意味を探った。その結果種々の「キリスト図像」が、キリストの人間の身体と不可分なペルソナに焦点を当てた受肉理解であるのに対して、エックハルトの受肉理解は人間的ペルソナ否定において、位格的結合の可能性と実現が万人に開かれた救済論的メッセージであることが確認された。またエックハルトの主張と異端判定理解との間には明らかな乖離があることが明確になった。
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