研究課題/領域番号 |
22520074
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
野崎 充彦 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90244623)
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研究分担者 |
高坂 史朗 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20170178)
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キーワード | 近世 / 朝鮮 / 儒者 / 民族 / アイデンテティー / 中華夷思想 / 韓中関係 / 慵斎叢話 |
研究概要 |
研究課題「近世朝鮮儒者の民族アイデンテティーをめぐる言説-東アジア諸地域との対比から」を遂行するため、次のような研究会、および調査活動を行った。 7月9日金子祐樹「『東国三綱行実』における「忠」概念に対する考察」をめぐり、高坂史朗らと研究会を開催し、討議した(大阪市大アジア都市文化学)。 10月26~29日韓国ソウルを訪れ、沈慶昊(高麗大教授)と朝鮮近世儒者の文芸思想に関して討議。また、高麗大学図書館において文献調査・収集を行った。 12月13~18日「東北アジアの歴史地図から見る」と題し、客員研究員として金裕哲(延世大学教授)尹炳男(西江大学教授)を韓国から招聘し、古代から近代に到る東アジアの歴史地図編纂事業に見られるイデオロギーについて討論した。また、岐阜県立図書館において「外邦地図」の収集を行った。 12月21~27日中国北京を訪れ、琴知雅(北京大副教授)と前近代韓中関係について討議。また苗千梅(北京外大副教授)と中国における朝鮮時代文学研究の動向について討議。および、研究資料を収集した。 3月26日~30日韓国ソウルを訪れ、朴煕秉(ソウル大教授)と朝鮮時代漢文学、および古典文学史の方法論・華夷思想について討議。また、奎章閣などにおいて資料を収集した。 この他、野崎は研究報告書として、15世紀の著名な士大夫である成俔の随筆集『慵斎叢話』を中心に、近世朝鮮士大夫社会の精神世界を描いた著作を準備しており、予定原稿300枚のうち200枚近くまで書き上げ、次年度中には完成の予定であいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は研究課題の扱うべき対象が拡大しすぎる傾向があったが、成俔の『慵斎叢話』を主軸に考察を展開するよう努めた結果、多様な問題意識を一定の秩序のもとに整理・発展させうる手がかりを得、研究課題の達成に確かな見通しを立てることができた。また、韓国や中国の研究者からも有益な知見を得ており、おおむね順調な進展と評価できよう。
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今後の研究の推進方策 |
近世朝鮮儒者の精神世界を中心にしており、当時の政治・文化的な状況から関わりの深い朝鮮と中国との二国間の比較考察に重きを置かざるを得ないが、可能な限り、日本との比較も試みたい。 最終年度に鑑み、研究成果をシンポジウムや研究会などで発表し、そこでの成果を研究成果報告に取り込み、15世紀朝鮮の著名な士大夫である成俔の『慵斎叢話』を中心に、思想・文学・文化論の視点から民族アイデンテティーに対する考察をまとめていく。
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