本研究はスンナ派イスラーム思想の大成者ガザーリー(1111年没)以降のシーア派・スンナ派間の宗派論争の展開を思想史的に分析することを目指すものであり、平成22年度は研究計画に則り、イブン・ワリードの著作とマジャーリス・アル=ヒクマ文書を用いて、シーア派の一派イスマーイール派によるスンナ派への反論を分析した。ガザーリーのシーア派攻撃に対してはシーア派の側からも様々な反論があり、思想史的にも重要なのであるが、これまでは充分に研究されてこなかったからである。 本年度は研究調査の一環としてオマーンに赴きハワーリジュ派の文献を収集した。ハワーリジュ派はスンナ派、シーア派に続くイスラーム第三の宗派であるが、ここで収集した文献を通じ、彼らの視点から見たスンナ派とシーア派の思想史的展開を解明することで、スンナ派・シーア派間の宗派論争を相対化する見地を視野に入れることが期待できるだろう。 なお、研究計画書に記してあるように、本年度は資料の収集、テクストの読み込み、写本のデジタル化に専念する年度であったため、研究成果の発表は翌年度以降となる。
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