研究概要 |
【研究の意義】本研究は、最も重要な西方ラテン教父アウグスティヌス(354-430年)が、自らの神学全体とその教育に関する見取り図を展開した『キリスト教の教え(De doctrina christiana』(全4巻)の総合的研究を目的とする。同著作はその広範な受容からキリスト教的ヨーロッパ思想の理解のために非常に重要な意味を持つ。だが国内研究は、同著作本来のキリスト教神学の文脈を十分に顧慮しない現代解釈学の視点からのアプローチに留まっている。そこで本研究は、以下の具体的目的を掲げた。 【目的】国内研究に対しては、(1)原著本来のキリスト教神学の文脈において、これまでの国内外の研究成果を総括した『キリスト教の教え』の邦訳・註解書を刊行する。(2)同著作の中で重要な意味を持つドナティスト派神学者ティコニウスの『規則の書(Regula)』の邦訳・註解書を刊行する(国内初訳)。(3)国内文献が少ない領域である教父時代の聖書解釈学の歴史を扱った基礎文献Manlio Simonetti:Biblical interpretation in the early Church: an historical introduction to patristic exegesis(Edinburgh: T&T Clark, 1994)の邦訳を刊行する。また国際的研究の次元においては、(4)研究代表者が兼任研究員であるHugo von St. Viktor Institut fur Quellenkunde des Mittelalters, Frankfurt/Mainとの連携のうちに国際学会を企画開催し、研究成果を発表する。 【成果】(1)『キリスト教の教え』は平成22年度にラテン語原典の内容検討と研究協力者による下訳が完了したので、これをもとに訳文校訂と註解の執筆を進めた。(2)『規則の書』は平成22年度にラテン語原典の内容検討と研究協力者による下訳が完了したので、これをもとに訳文校訂と註解の執筆を進めた。またすでに網羅的に蒐集されたティコニウス関係の文献資料の分析と研究を進めた(3)平成22年度に研究協力者により作成された下訳に基づき訳文校訂作業を進めた。(4)研究代表者は、平成23年7月にイタリア・パドヴァ大学哲学部において国際学会<<Fides Virtus: The Virtue of Faith in the Context of the Theological Virtues. Exegesis, Moral Theology, and Pastoral Care from 12th to Early 16th Century.>>を共同企画し、聖書解釈学史の観点からの発表招待を受け、それを行った。また国際的研究の次元で重要な意義を持つ単著(ドイツ語、約500頁)を刊行した。
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