本年度は明治大学よりパリでの長期在外研究を許可されたため、パリの全イスラエル同盟付属古文書館、フランス国立図書館にて、ディアスポラ・ユダヤ教をめぐる貴重な文献資料を閲覧することができた。特にレヴィナスたちいわゆる「パリ学派」を支えたヤーコプ・ゴルディンの博士論文などを読むことができたのは大きな収穫であった。第二に、パリ在住という利点を活かして、一方ではイスラエル、他方ではポーランド、チェコ、ハンガリー、オーストリア、リトアニアのユダヤ関連施設を視察することができた。アウシュヴィッツ収容所跡、ブダ・ペストのシナゴーグ、ヴィルニュスのガオン・エリヤーフー記念館、プラハのユダヤ人墓地、カフカ記念館、諸都市のホロコースト記念館の視察は、まさにディアスポラ・ユダヤ教研究にとって核心的な経験となった。イスラエルのディアスポラ記念館においても様々な得難い知識と映像に接することが出来た。キブツなどの訪問も本研究にとって大きな意義を持つものだった。リトアニアでは、当地のレヴィナス研究家と議論を深めるとともに、イスラエルのヘブライ大学、チェコのカレル大学、ブダ・ペストのフランス学院では、ディアスポラ・ユダヤ教、レヴィナス、ハイデガーをめぐるシンポジウムに参加、みずからも発表を行うことが出来た。パリでは、ハナ・アーレントの研究者として著名なマルティーヌ・レボヴィシ、パリ第七大学教授と日々議論を深めるとともに、ダニエル=コーエン・レヴィナス、パリ第四大学教授主宰のユダヤ教セミナー、レヴィナス・シンポジウムに参加し、発表、授業を行うことができた。パリでの長期在外研究という機会を活かした研究を遂行することができたと考える。
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