研究課題/領域番号 |
22520085
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
矢羽野 隆男 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (80248046)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 懐徳堂 / 並河寒泉 / 泊園書院 / 大坂漢学 / 藤澤東ガイ |
研究概要 |
24年度は22年度・23年度に行った調査・考察の成果を公表する機会があり、そのための準備および論文作成に費用・時間を費やすこととなった。 まず大阪市立大学で開催された第64回日本中国学会において「幕末懷德堂の陵墓調査―最後の教授・並河寒泉の活動」(平成24年10月7日)と題して発表を行った。並河寒泉が安政年間に幕命を受けて調査に当たった河内の陵墓調査の経緯と実態を明らかにし、それが文久の修陵事業につながるものであったという事実の思想的・歴史的な意義を考察する内容であった。 学会発表の内容は論文にまとめ、25年1月に日本中国学会報に投稿したが、「陵墓調査としてみた場合に、寒泉のそれがどのような特色を持つものであるか、比較検討する必要がある」という理由で掲載に至らなかった。この論文のうち、寒泉の陵墓調査の経緯と実態を明らかにした部分は25年度中に公表する。また学会の査読意見を受けて、同時代の陵墓研究との比較検討の視点を盛り込んで寒泉のそれの特色を見やすくした論文を可能であれば25年中に執筆したい。 また、23年度に着手して一応の成果を出した藤沢東ガイ(田+亥)の『辨非物』※に関する知見等にもとづき、関西大学東西学術研究所・泊園記念会主催の第52回泊園記念講座「泊園書院とその周辺2」において「泊園書院の『論語』学-懐徳堂との関わりから-」と題する講演を行った。『論語』を軸にして、懐徳堂と泊園書院との関わりを近世・近代の大坂漢学史に位置づけようと意図するもので、本研究「変革期における大坂漢学」のまとめの素描の意味をもつ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予定では2年間で『居諸録』に盛り込まれた情報をI学生情報、II講学情報、III学術交流情報、IVその他(政治社会の主な出来事への所感・論評)に分けて抽出整理する計画であった。現在、I・IIは困難なく進んでいるが、IVの情報が多岐にわたり多くの時間を要し、その結果、計画に遅れがでることになった。 また24年度は、これまでの研究成果の発表・論文執筆の機会を得て、一通りのまとめをすることができたが、一方で公表の準備・執筆に時間を費やすこととなった。そのため当初23年度に着手を予定していた『寒泉遺稿』の整理・情報抽出に作業を進めることができずに終わった。
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今後の研究の推進方策 |
まず『居諸録』の情報抽出については、I学生情報、II講学情報、III学術交流情報、IVその他(政治社会の主な出来事への所感・論評)の抽出項目のうち、困難を伴うIVについてはひとまず保留とし、I・II・IIIの抽出作業を継続して、研究の最終年度の26年度にはI・II・IIIの情報を公表することを目標として作業を進める。なお、IVについては、変革期を反映して「尊王」「攘夷」「幕府と諸勢力」といった内容の「風聞」の好資料でもあり、テーマを絞っての抽出するなど、以後の研究の材料として蓄積を考える。 次に1年半遅れの着手となる『寒泉遺稿』の整理・情報抽出の作業については、25年度の早期に着手し、25年度の優先課題として『寒泉遺稿』の整理を完成させ、懐徳堂の特色がよく表れている資料の抽出・解読を進める。 24年度に行った発表のうち、寒泉の陵墓調査の経緯と実態を明らかにした論文はほぼ完成しているので、25年度中に公表する。また、他の陵墓研究との比較検討を通じて寒泉のそれを闡明した研究成果については、上記の作業の進捗状況を見て、可能であれば25年度中に執筆したい。
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